AGA(男性型脱毛症)は男性ホルモンが原因であるとされています。体内にある男性ホルモンを調整する治療法は、些か不安を覚える人も多いでしょう。
また、AGA(男性型脱毛症)を治療したいと感じていても、本当に治るのかどうかという不安もあるかと思います。AGAの治療方法は、大きく分けて3種類です。
- AGA治療薬(フィナステリド・デュタステリド・ミノキシジル)
- メソセラピー
- 植毛
特にAGA治療薬による治療方法は、AGA治療を専門的に受診しているクリニックの他にも、皮膚科でも処方されるオーソドックスな治療方法になります。
AGA治療薬の種類は何種類か?
個人輸入代行のサイトでAGA治療薬をみると、フィナステリド一つ取っても80件以上の該当商品が上がってきてしまい、しかも名前も似たようなものばかりでややこしいと感じたことがありませんか?
たしかに各製薬会社から販売されているので、薬品名も異なります。しかしAGA治療薬で使用される薬の成分は、同じものです。
フィナステリドであればプロペシアやフィナロイド、フィンカーといった商品名、デュタステリドであればザガーロ、ミノキシジルならフォリックスなどで販売されています。
フィナステリドとデュタステリドの作用機序とは
AGA(男性型脱毛症)の仕組みは、男性ホルモンであるテストステロンが、5αリダクターゼと結びつくことでジヒドロテストステロンへと変換されるところから始まります。
5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、フィナステリドが作用して阻害するのは頭頂部や前頭部に比較的多く分布しているⅡ型です。
ジヒドロテストステロンは変換された後、頭髪の細胞である毛乳頭細胞の中にあるとされている受容体と結びつき、脱毛指令を出すように毛乳頭へ指示を出します。
フィナステリドはこの5αリダクターゼⅡ型を阻害する作用があり、脱毛指令を促すジヒドロテストステロンをそもそも変換させないようにすることで、抜け毛を減らす薬になります。
デュタステリドは5αリダクターゼⅡ型とⅠ型の両方に作用しており、フィナステリドよりも効力が強いとされ、フィナステイドで効果を感じられなかった人などに処方されるケースがあるようです。
ミノキシジルの作用機序とは
高血圧の降圧剤として開発され、その副作用に多毛症が確認されたことで薄毛治療薬として改めて開発されたのがミノキシジルになります。ミノキシジルの評価は、毛髪の成長期における細胞を活性化させる効果も確認されていることから、男性型脱毛症治療ガイドラインでも推奨すべきという意味でもA評価です。
ミノキシジルには成長期中の毛母細胞を活性化させる作用があると言われており、髪の毛がより太く長く成長しやすくなります。
ミノキシジルの初期脱毛は副作用なのか
ミノキシジルを使い始めたら髪の毛が抜け始めてしまい、改善するはずなのにどうして脱毛してしまうのだろうか、と疑問に思うかもしれません。ミノキシジルを取り扱う上で、「抜け毛がよりひどくなってしまった」と慌てないように初期脱毛について触れておきましょう。
AGA(男性型脱毛症)によって乱されたヘアサイクルでは、成長期の毛母細胞に作用するとしても、すぐに退行期、休止期へと移行してしまい、休止期の期間が長くなってしまいます。
ミノキシジルは、休止期を終え、新しく成長期へとの突入した毛髪の毛母細胞を活性化させてくれるので、古い毛髪を押し出す力が強くなり、細く弱った状態でしか成長できなかった髪の毛を脱毛させるのです。
この初期脱毛によって、細く短い毛髪は脱毛し、太く長い毛髪へと成長していきますが、初期脱毛の症状は個人差があるようで、早くても1ヶ月、3ヶ月間続いたという人も。
改善すると言って使ったものの、さらに脱毛してしまうのかと不安に感じるとは思いますが、ミノキシジルを使い始めて抜け毛が増えたと感じる人は、正常なヘアサイクルに戻るための準備をしている最中です。落ち着いて、伸びてくる髪の毛の経過を観察してみると良いかもしれません。
攻めのミノキ、守りのフィナス
AGA(男性型脱毛症)のAGA治療薬に関するページには「攻めのミノキシジル、守りのフィナステリド(またはプロペシア)」という表現が多く出ています。
AGA治療を行う際には、ミノキシジルとフィナステリド、またはミノキシジルとデュタステリドの1セットで処方されるケースが多いです。
AGA(男性型脱毛症)の原因は、ジヒドロテストステロンが毛乳頭にあるレセプターと結びつくことで脱毛指令を出し、ヘアサイクルを乱します。ミノキシジルは成長期の毛母細胞を活性化させる作用で、毛髪を成長させることが目的ですが、ジヒドロテストステロンがレセプターと結びつき抜け毛を促している状況ではすぐにまた脱毛してしまいます。
逆にフィナステリド、デュタステリドだけの処方では、5αリダクターゼの阻害をすることでジヒドロテストステロンへの変換を抑制し、抜け毛を減らすことはできても、毛母細胞を活性化させて、太くて長い健康な髪の毛を育てる作用は持っていません。
成長を促して強い毛髪を作るミノキシジルと、抜け毛を減らすことで髪の毛を守るフィナステリド(デュタステリド)の二つを併せて治療薬として使用することが重要です。産毛のような髪の毛しか生えてなく、頭皮が見える状態だったとしても、ミノキシジルとフィナステリドで薄毛は改善する余地はあります。
育毛メソセラピーについて
AGA治療を専門的に診ているクリニックでは、AGA治療においてメソセラピーを取り入れている所も多いです。
メソセラピーとは、栄養や薬剤を特殊な注射器を使って注入する施術のことを言い、AGAクリニックによっては「ジェットメソ」や「Dr’sメソ」、「オリジナルメソセラピー」など独自の名称を使用しています。薬剤や配合している亜鉛やビタミンなどの量や種類が異なるだけで、似たようなものです。
メソセラピーには毛髪に良いとされる亜鉛やビタミンなどの栄養の他に、毛髪に関する成長因子を注入します。成長因子とは、ざっくり言うと細胞分裂を促すたんぱく質のことです。
毛髪治療における成長因子の役割は、毛乳頭細胞が毛母細胞に対して成長因子を出すことで細胞分裂が活発になり、外部から注入することで不足している成長因子を補います。
メソセラピーには他にも「PRP療法」「HARG療法」といった特殊な施術も含まれています。
PRP療法(自己多血小板血漿注入療法)について
PRP療法とは、autologous platelet rich plasma(自己多血小板血漿)の略称です。メジャーリーグ所属のニューヨーク・ヤンキースの田中将大選手も右ひじの靭帯部分断裂の際に行った施術としても有名になりました。
自己多血小板血漿(けっしょう)注入法とは、患者自身の採血した血液から、濃縮した血小板を患部に注入する施術です。
血小板には組織を修復するように促すIGF-1(インスリン様成長因子)などの成長因子が豊富に含まれており、毛髪治療においては毛包や毛髪の成長を促す効果が大きいと言われています。
HARG療法について
HARG(ハーグ)療法とは、Hair regenerative therapy(ヘアーリジェネレイティブセラピー)の略称で、毛髪の再生治療の訳です。
HARG療法ではPRP療法やメソセラピー同様、成長因子を注入しますが、HARGカクテルという幹細胞から抽出した150種類以上の成長因子が含まれている薬剤を注入します。日本国内でも3000件以上の検証がされており、90%以上の症例にて毛髪の増加を確認、アレルギーの発現も報告されていません。
HARG療法では6回コースが1クールとして考えられており、発毛効果を実感するのに3ヶ月から半年はかかると言われています。しかしHARG療法では、注入する成長因子の効果だけではなく、毛包に元々ある幹細胞にも働きかけるため、毛乳頭細胞が正常な状態で働きます。毛乳頭が本来の働きを取り戻すことで毛母細胞への成長因子の分泌をし、さらにそこに150種類以上の成長因子が加わることで、より高い発毛効果が期待できといえるでしょう。
HARG療法は言わば毛包の幹細胞を活性化させることで、AGAによって乱れてしまったヘアサイクルを元に戻そうとする治療法です。フィナステリドかデュタステリドと併せて行うことで5αリダクターゼを阻害しつつ、薄毛になる前の毛髪の状態へと戻ることができるでしょう。
植毛について
AGAの進行がかなり進んでしまうと、既にヘアサイクルが終焉を迎えてしまっている可能性があります。そういった人たちは、いくらAGA治療薬やメソセラピーで治療しても、残念ながら毛母細胞が細胞分裂をしなくなってしまっているため手遅れです。
ヘアサイクルが終焉を迎えてしまった毛包から毛髪を生やすことはできなくとも、まだ活動している毛包を移植する手術が「植毛」で、最終手段ともいえるでしょう。
人工植毛と自毛植毛について
植毛にはポリエステルなどから作られている人工繊維を植え付ける人工毛植毛と、自前のまだヘアサイクルが正常に働いている毛包を摘出し、薄毛になっている部分に植え付ける自毛植毛の二つの選択肢があります。
人工毛植毛とは
人工毛植毛は自毛植毛のように、移植するドナーに制限がありませんので、希望する量を増やすことができることがメリットです。AGA治療薬のように徐々に毛髪が増えるのではなく、手術後にはっきりと以前より毛量が増えていることを実感できるでしょう。
しかし人口毛は抜けてしまうと自然に生えてくるわけではもちろんありませんので、年に数回のメンテナンスが必要になります。また、身体にとって異物を埋め込んでいるわけなので、拒絶反応として感染症や炎症を起こしてもおかしくはありません。
また男性型脱毛症診療ガイドラインにおいて、自毛植毛の推奨度はBに対して、人口毛植毛は、男性型脱毛症・女性型脱毛症ともに行うべきでないとされるD判定です。アメリカでは人工毛自体を有害器具と定めており、人口毛植毛そのものが禁止となっているほど。
自毛植毛とは
自毛植毛とは、患者自身の毛髪を薄毛部分に移植する植毛のことで、AGA治療の一つとして日本でも多くのクリニックが取り入れています。
人工毛植毛のように化学繊維を使わず、自分の細胞を移植するので拒絶反応や皮膚の炎症も起こりにくいことがメリットのうちの一つでしょう。また、自毛植毛で移植し、定着すれば正常なヘアサイクルで毛髪が成長していくので、脱毛してもまた新しい毛髪が生え変わりますので、人工毛植毛のよな定期メンテナンスは不要です。
ドナーの毛包は、移植後に目立ちにくい耳の横から後頭部にかけて摘出されます。このAGA(男性型脱毛症)の原因であるとされるジヒドロテストステロンとレセプターの結合が少ないとされているからだとも言われているとか。
ただし自毛植毛は、人工毛植毛のように手術後はっきりと効果を感じられるようになるまで数年はかかることがデメリットでしょう。定着したとしても「ショックロス」と呼ばれる局所麻酔の影響や組織の炎症反応による脱毛が起こる可能性もあります。ショックロスに関しては、必ず起こるというわけではありませんが、一時的に脱毛してしまうこともあることを念頭に置いた方がいいでしょう。
自毛植毛の手術方法について
自毛植毛では増やす毛量の単位が、毛髪1本とせず、株(グラフト)と数えられます。ヒトの頭髪は一つの毛穴から2~4本生えているため、1本ではなく1株で数えるのが一般的です。
fut法について
自毛植毛にはいくつか摘出方法があり、畑の作物をこぞって刈り取るコンバインのように、メスを使って後頭部の一部の一面からドナーを摘出する方法が「FUT法」と呼ばれています。一定量を摘出することができるため、一度にたくさんの移植が可能です。
fue法について
農作業において、新芽をある程度残して他を引き抜く間引き作業のように、グラフトを一定間隔で一つ一つくりぬいて摘出する方法が「FUE法」と言います。摘出する作業も移植の作業も多いため、一度に移植できる数に限りがあり、医師の手腕が問われる方法とも言えるでしょう。
また、FUE法では毛包をくりぬいて摘出しますが、時間がかかること、毛包を傷つけてしまう(毛根が切断されてしまう)こともデメリットとして挙がっていました。毛根が切断されてしまうと、いくら植毛で植え込んでも発毛の効果は期待できません。
それをクリアしたと宣伝しているのが、AI搭載のFUE採取ロボットを使用したARTAS(アルタス)植毛です。人の手では時間がかかり、ドナーを植え込む際の植え込む位置や毛包の生えている向きなど、人の手で正確に摘出・移植するには限界があります。それを可能にしたのがARTAS(アルタス)と言えるでしょう。
まとめ
- AGA治療は、大まかにAGA治療薬とメソセラピー、植毛の3種類
- AGA治療薬には攻めのミノキシジル、守りのフィナステリド(デュタステリド)の2種類で治療する
- 基本はAGA治療薬で、メソセラピーは治療薬の補助的に治療をうけるのがオススメ
- メソセラピーにはPRP療法やHARG療法など種類が豊富
- AGAクリニックでは含有成分を少し変えてオリジナルとして施術している所が多い
- ヘアサイクルが終焉を迎えた人は植毛手術で毛包を移植もしくは植え付ける
- 植毛にはメスで刈り取るFUT法とくり抜くFUE法の2種類の摘出方法がある
- FUE法にはAI搭載の毛包摘出ロボットのARTAS植毛もあり、FUEのデメリット(時間と医師の力量不足)をカバーしている