AGA(男性型脱毛症)の治療を行う上で、ほとんどの人がAGA治療薬による投薬治療を選択するでしょう。医師からの説明はあるものの、その場での情報量が多すぎて、副作用については覚えていないことがあります。AGA治療薬には性機能に関しての副作用や、肝機能障害のある人には服薬できないものなど、注意すべき点が多いです。
フィナステリドの副作用について
フィナロイドやフィンペシア、フィンカーという名称にて個人輸入代行サイトで見かけたことがあると思いますが、全て同じ「フィナステリド」という成分でできております。国内で承認されている先発医薬品名は「プロペシア」です。
フィナステリドを配合している治療薬には、過敏症や性機能、肝臓に関しての副作用が報告されています。副作用発現の割合は、1mgを服薬した139例中9例で、6.5%です。その内の4例に性機能に関する副作用が発現し、3例にリビドー減退や勃起不全などの症状が出ていることが臨床試験でも明らかになっています。
上記の表以外に重要な副作用として肝機能障害が報告されています。プロペシアは主に肝臓で代謝されるので、肝機能障害を持つ人は個人の判断で服用せずに、医師の判断を仰ぐようにしましょう。肝機能障害患者による服薬の臨床試験は行われていないので、どんな症状が起こるのかが公開されていません。
また、フィナステリド配合薬を服薬した際に過敏症(じんましんやアレルギー反応)が発症したことがある場合、違う薬品名だったとしても、服薬は避けるようにと禁忌次項に記載されています。
禁忌次項には肝機能障害患者への服薬禁止の他に、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性及び授乳中の女性への服薬禁止」と掲載されています。妊婦や授乳中の女性が服薬すると、男子胎児の生殖器官が正常に発育しないおそれがあるためです。
フィナステリド成分は経皮吸収されることもあるため、女性パートナーがいる場合は、錠剤を砕いたり割ったりしないようにしましょう。通常の錠剤の状態であれば、コーティング剤が付いているため、フィナステリド成分に直接触れることはありません。極端な話、フィナステリド配合の錠剤を触った手で女性に触れるのは良くても、キスなどは控える方が良いかもしれません。
デュタステリドの副作用について
フィナステリド成分よりも5α還元酵素の阻害作用が強力とされているデュタステリドは、フィナステリドよりも副作用の発症率が高いようです。
国内外の臨床試験を合わせてみると、557例中95例に副作用が発現しており、発現の割合は17.1%でした。発言した副作用の内容は主に勃起不全24例、リビドー減退22例、精液量減少7例が報告されており、日本人では射精障害も2例報告されています。
また、前立腺肥大症の患者がデュタステリドを服用した際に、男性乳がんの発症も確認されました。デュタステリドとの関連性は未だ不明のままですが、海外の臨床試験では4325例中3例に乳がんの発現が確認されています。関連性が未解明ですが、無関係であるということもまだ証明されていないので、触って分かるほどのしこりがある場合や乳頭から血の混じった分泌物が出る場合などは、直ちに医師へ相談してください。
またフィナステリド同様、肝臓で代謝するため、重度の肝機能障害を持っている人は医師の判断を仰ぎましょう。
フィナステリドとデュタステリドの共通注意事項
- 肝機能障害のある患者への投与は必ず医師に相談する
- 妊婦・授乳中の女性への接触は、経皮吸収の恐れがあるため禁忌
- 投与して過敏症が発現した既往歴がある人は投与禁止
- 錠剤を砕いたり割ったりしない
ミノキシジルについて
ミノキシジルには内服薬タイプの「ミノキシジルタブレット」と外用薬タイプの「ミノキシジルローション」があります。外用薬はスカルプDシリーズのメディカルミノキ5や、大正製薬のリアップなどがCMで見かけたことがあるでしょう。
ミノキシジル外用薬の副作用
ミノキシジルにの外用薬には皮膚や頭皮のかゆみ、かぶれなどが発現する可能性が報告されていますが、これは外用薬や塗布剤ならどの薬でも起こりえる症状です。
代表的なミノキシジル外用薬としてリアップの添付文書を確認してみると、他にも胸の痛みや心拍数の増加、めまいや気が遠くなるなどの症状があります。もともとは高血圧の人の血圧を下げる降圧剤として開発されてきたミノキシジルですので、胸の痛みや心拍が速くなるなどは、ミノキシジル特有の副作用といえるでしょう。
ミノキシジルはもともと高血圧の患者に服用する血圧を下げる薬として開発されてきました。開発の最中に全身の毛が以上に発毛する症状が確認され、以降は発毛薬として研究が進められています。血圧に影響を及ぼすことのある商品であるため、高血圧の人や低血圧の人は、医師に相談してから使用するようにしましょう。
尚、リアップでは禁止されている項目が4つあります。
リアップ(ミノキシジル成分配合の外用薬)使用禁止の人
- ミノキシジル成分配合の塗布剤を使用してアレルギー症状を起こしたことがある人
- 女性
- 未成年
- 髪が斑状(丸い円のような状態)で脱毛している人や、脱毛が急激な人
そしてこの他に、7つの内あてはまる症状が一つでもある人は、使用する前に医師または薬剤師へ相談が必要になります。
リアップ(ミノキシジル成分配合の外用薬)使用要相談の人
- 発疹、発赤、かゆみ、かぶれ等のアレルギー症状が薬や化粧品で起きた既往歴のある人
- 高血圧または低血圧の人
- 心臓、または腎臓に障害のある人
- むくみのある人
- 親族に壮年性脱毛症の人がいない人
- 65歳以上の高齢者
- 甲状腺機能障害の診断を受けている人
壮年性脱毛症とは、女性と男性どちらにもみられる抜け毛の増加やヘアサイクルが乱れて脱毛する薄毛のことを指し、男性型脱毛症もこの分類に入ります。
ミノキシジル外用薬には濃度が異なるものが販売されており、男性には5%や10%などの高濃度ミノキシジル配合外用薬を使用することができますが、女性は1%までのものが一般的です。これは、国内で臨床試験ではミノキシジル配合量1%のみが、女性での臨床試験に使われたことにより、1%の外用薬を推奨しています。
ミノキシジル内服薬の副作用
ミノキシジル内服薬はノキシジルやロニテンといった名称で通販サイトに登録されていることが多く、発毛薬としても有名です。しかし副作用が発現した場合、症状が重く危険性が高い症状が多いです。
副作用に関しては、胸の痛み、心拍数の増加、呼吸困難などの心血管系障害が生じる可能性があると記載されていました。他にもうっ血性心不全やむくみ、体重の増加などの副作用発現も報告されています。
ミノキシジルの内服薬は国内で臨床試験を実施されておらず、取り扱っている皮膚科も少ないです。一方でAGAクリニックでは医師の診断と血液検査、場合によっては遺伝子検査の元、医師が処方しています。
ミノキシジル内服薬は、海外で降圧剤として使用されているようですが、普通に処方されるような薬ではありません。他の降圧剤でも効果が得られない場合に限っていますので、かなり限定的な使われ方をしているようです。さらに服用する場合は、心臓の動きを少し休める作用のあるβ遮断薬や、利尿剤と併用するように警告しています。
国内では十分な検証がなされていない為、男性型脱毛症診療ガイドラインでの評価は、D(推奨しない)です。デュタステリドの女性への投与と同ランクですので、警告レベルの強い薬であることに間違いないでしょう。
臨床試験がきちんとなされていないがために、十分なデータが集まらなかったため、国内で承認できていないのです。しかし重大な副作用が確認されていることは確かですので、ミノキシジル内服薬を服用する場合は、個人輸入で服用するのではなく、必ず医師に判断してもらうようにしましょう。
まとめ
- フィナステリドの副作用発現率は6.5%
- フィナステリドの副作用にはリビドー減退や勃起不全、肝機能障害がある
- デュタステリドの副作用発現率は17.1%
- デュタステリドの副作用にはリビドー減退や勃起不全、肝機能障害がある
- デュタステリドを服用して男性乳がんを発現した事例がある(関係性は未解明)
- ミノキシジル外用薬の副作用は胸の痛みや心拍数の増加、めまいや気が遠くなるなどがる
- ミノキシジル内服薬の副作用は外用薬の副作用に加え、吸困難などの心血管系障害やうっ血性心不全も起こる場合がある