AGAとはどんな病気なのか

時代が令和に突入すると、薄毛に悩む人や、それを報道するニュースも増えてきていると感じますね。先日の朝日テレビでは中国におけるかつら業界が紹介され、人口約14億人の内2億5千万人の人が抜け毛に悩んでいると報道されました。

日本でも、成人男性3人に1人が悩んでいる症状でAGA(エージーエー、男性型脱毛症のこと)で悩んでいる人が多いです。

AGAとはAndrogenetic Alopecia(アンドロジェネティック・アロペシア)の略称で、男性型脱毛症のことを指します。男性ホルモンが原因とされている脱毛症で、進行すると毛髪が育たなくなってしまい、頭皮が透けて見える状態になってしまうのです。

しかしAGA(男性型脱毛症)を発症しても、いきなり髪の毛がまとめてゴッソリ抜けるような事態にはなりません。

AGA(男性型脱毛症)とはどんな症状なのか

AGA(男性型脱毛症)は脱毛症の一つで、髪の毛が細い産毛のような状態でしか育たなくなります。そのような、産毛のような髪の毛しか生えてこない「つむじ」や「額の生え際」の見た目は、どんどん頭皮が見えるようになってしまい、M字ハゲやてっぺんハゲのような状態です。

AGA(男性型脱毛症)になってもいきなり髪がゴッソリ抜けてしまうわけではない、と言いましたが、それを説明するには「ヘアサイクル」と「AGA(男性型脱毛症)になるとどうなるのか」を説明する必要があります。

まずは「ヘアサイクル」と呼ばれるものについて説明しましょう。

ヘアサイクルとは髪の毛の一生涯である

髪の毛は、その場所から永遠に伸び続けている爪のような細胞ではありません。髪の毛1本が永遠に伸び続けるわけではなく、同じ毛穴から髪の毛が、成長した後に自然に抜け、また成長をする行為を何度も行って生まれ変わっているのです。

hair-cycle
ヘアサイクル

成長期で髪の毛が成長をし、髪の毛の成長を止め、毛包(毛根を包んでいる細胞)が縮小して表皮近くまで縮む退行期、毛包がまた次に生えてくる髪の毛が成長を止めた髪の毛を押し出して脱毛させる休止期を順番に繰り返しています。この一連の流れ、言わば髪の毛の一生を「ヘアサイクル」と呼びます。

髪の毛の成長の仕方

髪の毛は、毛球と呼ばれる髪の毛の根元の膨らんでいる部分にある毛乳頭細胞が、髪の毛の元となる細胞の毛母細胞に成長するように指令を出すことで成長します。

髪の毛の細胞について
髪の毛の細胞について

毛乳頭細胞が成長シグナルと毛母細胞に出すことで、毛母細胞は細胞分裂を繰り返し、そして死んでしまいます。死んだ細胞を押し上げるような形で毛母細胞はさらに分裂を繰り返していくのです。髪の毛が「死滅細胞だからダメージを与えたら修復できない!」と言われているのも、毛母細胞が死んだ状態で私達の目に見えているからです。

分裂細胞は徐々に角質化し、毛髪を形成して行きます。
つまり、髪の毛とは「分裂後に死んだ (角化)した毛母細胞の集まり」なのです。

銀クリAGA.com – 何故「早期の対策が重要」なのか? より

AGAになるとヘアサイクルが乱れる

ヘアサイクルは成長期、退行期を経て休止期になり、また成長期へと向かっていくと話しました。AGAが発症すると、正常だったヘアサイクルが乱れてしまい、脱毛時期が早まってしまうのです。

AGAの原因は、男性ホルモンが髪に悪影響を及ぼす物質へと変わってしまうために起きると言われています。男性ホルモンであるテストステロンが「5αリダクターゼ」と呼ばれる還元酵素と結びつき「ジヒドロテストステロン(DHT)」へと変換し、ジヒドロテストステロンは毛乳頭細胞のレセプター(受容体)と結びつきます。

AGA - 脱毛までの流れ
AGA – 脱毛までの流れ

毛乳頭細胞内のレセプターと結びつくことで、ジヒドロテストステロンは毛乳頭細胞へ脱毛指令を出すように指示を送ります。毛乳頭細胞はその指示を受けて毛母細胞をストップさせるので、ヘアサイクルでの休止期へと移行し、成長期の髪の毛は成長途中で脱毛してしまうのです。

薄毛は遺伝と言われる理由

薄毛は遺伝であるとよく耳にしますね。5αリダクターゼの活発性とジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞内にあるレセプターに結びつく感受性、これらが親からの遺伝によって受け継がれると言われています。

毛乳頭細胞内のレセプターと結びつくことで、ジヒドロテストステロンは毛乳頭細胞へ脱毛指令を出すように指示を送ります。毛乳頭細胞はその指示を受けて毛母細胞をストップさせるので、ヘアサイクルでの休止期へと移行し、成長期の髪の毛は成長途中で脱毛してしまうのです。

AGAが発症すると、こういった流れで脱毛していきますが、いきなり抜け毛が増えるわけではありません。

AGAになるとヘアサイクルが乱れるだけではない

乱れたヘアサイクル
乱れたヘアサイクル

AGAによって乱れたヘアサイクルは、ジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞へ脱毛指令を出すように指示を出します。その指示を受けた毛乳頭細胞は、毛母細胞に脱毛シグナルを出すことで成長期の途中にもかかわらず、成長を止め退行期へと移行すると前述しました。

ヒトは1日で50~100本近くの髪の毛が自然脱毛すると言われています。10万本程度ある頭髪の数本がAGAによる脱毛かどうかは区別がつきにくいです。その為、自覚症状が長い期間ない状態が続きます。

自覚症状がないため対策をとることができず放置してしまうと、髪の毛にさらなる変化が現れます。それが「毛包のミニチュア化」です。

「毛包のミニチュア化」は髪の毛が育ちにくい症状

成長期が短くなり、髪の毛の成長がストップしている休止期の期間が長くなると、毛包は脱毛準備のために縮小していきます。通常であれば、髪の毛の成長と共に、毛包も毛細血管まで根を深くしていきますが、AGAによって乱れたヘアサイクルでは毛包は正常に成長できません。

毛包が十分に成長できないという事は、太くて長い髪の毛を作ることもできないという事です。

ヘアサイクルには回数に限度がある

ヘアサイクルは成長期に2~6年、退行期に数週間、休止期に数ヶ月かけて繰り返しています。しかしそれも無限に繰り返しているわけではなく、最短でも80年間はこの周期を繰り返します。これは、毛母細胞(だけではなく、人の身体を構成する細胞)の細胞分裂する回数の限度が40から50回程度と言われているからです。

ヒトでは細胞分裂の限界は約50回であり、毛母細胞も例外ではありません。

毛乳頭細胞からシグナルを受けて分裂する回数にも限界があるのです。

銀クリAGA.com – 何故「早期の対策が重要」なのか? より

ヘアサイクルが一周するのに2~7年ですので、単純計算2年×40回で80年間は細胞分裂を行うので、ヘアサイクルは循環すると考えられていますが、AGAの場合はそうはいきません。

AGA(男性型脱毛症)によって乱れてしまったヘアサイクルは、半年から1年程度で脱毛までしてしまうので、サイクルのスパンが短くなっています。

例えば30歳でAGA発症した人がいたとしましょう。
毛母細胞の細胞分裂がそれまで正常に機能していたと仮定して、残りの年数は50年分です。半年でヘアサイクルを一周してしまうとなると、残り25年分しか細胞分裂ができなくなり、55歳には毛母細胞の細胞分裂ができなくなります。

毛母細胞が細胞分裂ができなくなると、それ以上その毛穴からは毛髪が生えてきません。

まとめ

  • 男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼと結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)へと変換される
  • DHTが毛乳頭細胞にある受容体(レセプター)と結びついて毛乳頭細胞へ脱毛指令を出す
  • 指令を受けた毛乳頭細胞は、成長をしている毛母細胞の成長をストップさせる
  • 毛母細胞の細胞分裂が止まり、ヘアサイクルにおける成長期は強制終了
  • 成長期が強制的に退行期へ移行し、休止期が長くなる
  • 毛髪と共に成長する毛包が十分に成長ができなくなる(毛包のミニチュア化)
  • 細く短い産毛のような毛しか育たなくなり、ヘアサイクルが終焉を迎える

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です